『この世界の片隅に』この映画のことを書いてあります。昨年11月29日に発行の子ども劇場の機関紙の記事です。(写真では見にくいので書き起こしました。)
記事を書いてくれた白神さんは、こうの史代さんの漫画が好きで、この作品が映画になる前からクラウドファンディングで、映画化を応援されていました。
これから、作品を観たいろんな人の感想などもシェアしていきたいと思っています。
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『今を生きる「この世界の片隅に」生きた人々と……』
「ふつう」という言葉が苦手だった。「しあわせ」という言葉も。ひねくれていたのかなぁ。「自分は自分」「自由に生きたい」と思っていた子ども時代は、今も胸の中にある。
ただあの頃と違うのは、普通に生きることの大切さを言えちゃうこと。(ちょっとはずかしいけどね)
どうってことない日々だが、気づけばいつもそばに。沈んだり、浮き上がったりする私を、そっと小さくしてくれる。
毎日様々な表情を見せてくれる空や海、輪とした木々の姿、さえずる鳥たち、土に生きる草や虫。
この世界の彼らへのささやかなリスペクトあればこそ、どんな日もなんとか生きていける。
ごはんをつくって、洗濯物干して、仕事に行って、普通の暮らしを続けていける。思えば生活能力なかった私だからこそ、余計身にしみるんだろう。
実は映画「この世界の片隅に」を観て、その思いを強くしたのだ。
太平洋戦争中の広島・呉に嫁いだすずさんの生活が、今と静かに地続きに感じられる。
戦時中、食べるもの、着るものに苦労しては、草花を摘み工夫しながら料理したり、着物をリフォームしたり。暮らしのささやかな輝き、たいせつにすくいあげたからこそ感じられるせつなさだ。
戦争よ、私の暮らしを邪魔しないで、私たちの居場所をつぶしにこないで!
すずさんの言葉にならない怒りもひしひし伝わってくる。
だから、思う。
世界のあちこちの片隅で今を生きるたくさんのすずさんを。
手を伸ばしたくなる。声をかけたくなる。
「生きて、普通の生活を大切に続けていこうね」
白神 みどり